2014年7月7日月曜日

ラクナ梗塞


ラクナ梗塞の病態解説と診療の最新事情

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/stroke08/evidence/200806/506779.html
■ラクナ梗塞は日本人に多いタイプで(厚生労働省の2000年度調査では、全脳梗塞の36%を占める)、大脳深部(脳の深い部分)に血液を供給している直径1mm以下(0.2〜0.3mm程度)の細い動脈である穿通枝の異常によって起こる。

■1本の穿通枝が詰まった閉塞した場合、壊死に陥る範囲は最大でも1.5cmを超えないことから、脳の深い部分にできた直径1.5cm以下の梗塞をラクナ梗塞と呼んでいる。
「ラクナ」はラテン語で、“小さなくぼみ”を指す。
高血圧のために極端に血管壁が厚くなった動脈や、血管壊死が修復されて閉塞した動脈がラクナ梗塞の原因となる。

■ラクナ梗塞では侵される範囲が狭いため、症状も大部分は半身不随などの片麻痺、感覚の低下やしびれ感などの感覚障害のみで、比較的軽症のケースが多く、意識障害を起こすことは極めて少ない。
1回だけの発作では大きな後遺症を残すことは少ないが、繰り返し再発すると血管性痴呆パーキンソン症候群などを来しやすいといわれる。

■ラクナ梗塞の診断のためには、主幹動脈に閉塞がないことを確認する必要があり、そのためにMR血管造影が重要な役割を担っているとされている。
また、最近では、脳MRI画像(2強調横断像)からラクナ梗塞領域を自動的に検出する手法の開発が試みられている。

急性期と慢性期の治療
■ラクナ梗塞の急性期治療は輸液が基本だが、主幹脳動脈に有意な動脈硬化性病変を有する場合には、積極的にアスピリンチクロピジンなどの抗血小板薬を投与する。

■超急性期の治療については、アテローム性脳梗塞と同様、発症後3時間以内に遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)製剤のアルテプラーゼ静脈内投与が適応となるが、使用に当たっては厳しい適応条件が定められている。

■2次予防(再発予防)には抗血小板薬の使用が奨励されるが、抗血小板薬の中で有意な再発予防効果が認められているのはシロスタゾールのみである(CSPS試験)。
血圧の十分なコントロールが必要とされている。

アスピリン、チクロピジンに関しては、厚生省の研究班でラクナ梗塞に対する再発予防効果を約3年間にわたって追跡調査をした結果、両剤ともに再発を低減しないことが示された。また服用群では脳出血の発症率の高いことが明らかになった。

ラクナ梗塞に対する臨床試験は少ない。最近の話題としては、ラクナ梗塞患者を対象とした、スタチン(アトルバスタチン)の脳血管反応性(CVR)効果を検討した臨床試験「LA BICHAT」( Vasomotor Reactivity In Cerebral Small Vessel Disease And New Approach To Treat Lacunar Stroke)がフランスで実施され、2006年2月に終了した。

無症候性脳梗塞と一過性脳虚血発作(TIA)
アテローム性脳梗塞やラクナ梗塞など虚血性脳卒中に分類されない疾患で注意を要するものに、無症候性脳梗塞一過性脳虚血発作(TIA)がある。
いずれも将来的に脳梗塞を引き起こすリスクが高い前兆的な症状とされており、臨床的にも重要視されている。

■無症候性脳梗塞は、明確な自覚症状はなく、脳ドックのMRI検査などで発見される直径2-15mm程度の小さな梗塞を指す。
朝起床時の手のしびれ、重度の記憶力低下などの症状を認めるが、頭痛は伴わないことが多い。
将来脳卒中に進展する率が高く、注意が必要とされる。
無症候性脳梗塞の発症率は40歳代で30%、50歳代で50%、60歳代で70-80%というデータもある。
無症候性脳梗塞が発見されれば、チクロビジンやアスピリンなどの抗血小板薬の服用や運動療法で本格的な発症を予防することが必要とされる。

■TIAは、脳への血液供給が一時的に遮断されるために起こる脳機能障害である。
血流が再開すれば、症状は数分から20分程度で消失する。しかし、TIAは脳梗塞の前触れ症状の可能性もあるので、放置せずに確実な診断をつけることが肝要である。
TIAを放置した場合、脳梗塞への移行率は、数年以内に20-30%と言われているが、初回発作後1カ月以内21%、1年以内50%という統計もあることから、専門医の受診が必要となる。
TIAの直後1週間は脳梗塞が起こりやすいので特に注意が必要となる。

TIAに関する最近の話題では、TIAおよび小梗塞患者に対し、発症後24時間以内に、アスピリン単独、アスピリン+クロピドグレル併用、アスピリン+シンバスタチン併用、アスピリン+クロピドグレル+シンバスタチン併用の4群に割り付け、脳卒中の発症予防効果を検討する「FASTER」(Fast assessment of stroke and transient ischaemic attack to prevent early recurrence)のパイロットスタディがカナダで進められている。


2014年2月20日木曜日

テネイシンC

突然死防ぐタンパク質発見 大動脈解離、解明に一歩 

久留米大循環器病研究所(福岡県久留米市)を中心とする研究チームが18日、突然死の一因となる「大動脈解離」を防ぐタンパク質を発見したと発表した。

研究チームの青木浩樹教授らは人間の体内で生成されるタンパク質「テネイシンC」の働きを調べるためマウスで実験。
テネイシンCを生成するマウスは大動脈解離を発症しないが、生成できないようにしたマウスは半数が発症したため、テネイシンCが解離を防いでいると結論づけた。


出典 日経新聞・朝刊  2014.2.19
版権 日経新聞社