2013年4月13日土曜日

頸動脈プラーク内出血リスクとしての脈圧


どの血圧指標が頸動脈プラーク内出血リスクとなるか:ロッテルダム研究

オランダ・エラスムス医療センターのMariana Selwaness氏らは、前向き住民ベースコホート研究であるロッテルダム研究のデータを解析し、脈圧が頸動脈におけるプラーク内出血(IPH)の存在を示す最も強い血圧指標であることを明らかにした。
IPHは脳梗塞と関連するアテローム性動脈硬化の特徴であるが、これまでその決定因子は判明していなかった。
本研究の結果を踏まえてSelwaness氏は、「拍動流とIPHとの関連は、不安定プラーク(vulnerable plaque)の発現に関する新しい知見をもたらす可能性がある」とまとめている。
最も強い関連を示したのは脈圧
■対象は、超音波頸動脈内膜中膜厚(IMT)が2.5mm以上で、1.5T-MRI検査を受けていた45歳以上の健常者であった。

■IPHの存在は3D-T1w-GRE MRI画像で特定し、血圧指標とIPHとの関連について、年齢、性別、頸動脈壁厚、心血管リスク因子で調整した一般化推定方程式(generalized estimation equation)解析にて評価した。

結果
●年齢・性別による補正後解析の結果、IPHとの関連が有意であったのは、収縮期血圧と脈圧であった(それぞれp=0.04、p=0.002)。

●多変量解析後、最も強い関連を示したのは脈圧であった。

●収縮期血圧の同オッズ比は1.13(同:0.99~1.28、p=0.07)であり、その他の血圧指標で補正後も有意な関連を維持したのは脈圧のみであった。

●喫煙、収縮期高血圧の因子を統合すると、IPHの存在リスクは2.5倍(95%CI:1.2~5.2)上昇した。


<私的コメント>
患者さんから「血圧の上と下の数字が開くとよくない、と他人から聞いたのですが本当でしょうか」と尋ねられることがあります。
そんな時には「上下の血圧が開くのは(一部の疾患を除いて)動脈硬化がすでに起こっているからですよ。年齢とともにこの傾向が強くなるんですよ」と説明します。
この論文では年齢補正がしてあります。
しかし、動脈硬化が強いから結果として脈圧が大きくなり、動脈硬化があるからIPHが起こっているということかも知れません。
つまり、「脈圧による血圧の拍動成分や、さらに付随する血流の拍動による「ずり応力」が、既に存在する頸動脈プラークにメカニカルストレスをかけて、プラークを不安化させ、その内部に出血を生じさせた」とは言えないかも知れません。