2013年11月24日日曜日

季節の変化に伴う血圧変動

季節の変化に伴う血圧変動とミカムロの有用性
http://nbi.m3.com/ck9a5a674f26b12a8d2df417f461a8ca98729/contents/hypertensionfrontier/07/index.html?cid=201311AFM8&from=pc
■血圧には季節による変動があり、 気温の低下する秋から冬にかけて上昇が認められる。

■冬季と夏季の収縮期血圧の差は、 降圧治療中の症例であっても、 11.0mmHgと大きな差があった。(China Kadoorie Biobank Study  およそ50万人を対象に調査をした季節と収縮期血圧値の関連をみたデータ)

■ 気温の変化は 血圧の日内変動にも影響を及ぼす。
気温が低くなるほど、 起床時の収縮期血圧は 高値になる。
秋・冬においては 早朝覚醒前と起床時の収縮期血圧の差が大きくなる.
(Winter Morning Surge)

■心疾患および脳血管疾患による死亡数は 冬期において増加する。
(秋から冬にかけては、 より厳格に降圧治療を行うことが求められる)

■RA系)は 早朝覚醒前に活性化され、 早朝にピークとなることが知られている。
(この時間帯に活性化するRA系を抑制することが、 早朝の血圧上昇と 心血管系イベントの抑制に重要)

■冬期における血圧上昇に対する薬物療法としては、 RA系阻害薬の投与を基本とし、 降圧不十分な場合は 長時間作用型Ca拮抗薬の併用などで対処することが有用。




2013年10月29日火曜日

CKD患者の降圧と心血管イベント


CKD患者、血圧5mmHg下げれば、心血管イベント17%減る/BMJ

降圧治療の心血管系への効果について、慢性腎臓病(CKD)の有無別で検証したメタ解析(BPLTTCによる解析報告)。
結論
腎機能レベルを問わず、収縮期血圧(SBP)5mmHg低下につき主要心血管イベントが6分の1抑制される。

■わずかでも推定糸球体濾過量(eGFR)が低下した人への降圧治療は心血管イベントを予防する有効な戦略である。
■降圧薬のクラスエフェクトの解析も行われたが、エビデンスが示されず、「CKD患者の心血管イベント予防について、特定クラスの薬を優先的に選択することを支持するエビデンスは少しもない」という結論になった。

原文抄録
Blood pressure lowering and major cardiovascular events in people with and without chronic kidney disease: meta-analysis of randomised controlled trials.
BMJ (Clinical research ed.). 2013;347;f5680. doi: 10.1136/bmj.f5680.

2013年10月27日日曜日

2013年10月6日日曜日

アブレーションと抗凝固剤

■アブレーション時にワルファリンは中断しないほうがよい
文献
Periprocedural Stroke and Management of Major Bleeding Complications in Patient Undergoing Catheter Ablation of Atrial Fibrillation      The Impact  of Periprocedural Therapeutic International Normalized Ratio
         Di Biase L,  Natale A   Circulation 2010;121:2550-2556


■心のう液貯留はワルファリン使用の有無に関わらず同等の頻度で発生するが、ワルファリンを使用している場合の方がより濃厚な対応が必要となることがある。
文献   同上


2013年9月19日木曜日

腹部動脈瘤検診


腹部動脈瘤検診、高い費用対効果

要旨
検診の実施は非実施に比べ非常に費用対効果が高いと判断された。

原文
Cost effectiveness of abdominal aortic aneurysm screening and rescreening in men in a modern context: evaluation of a hypothetical cohort using a decision analytical model

2013年9月3日火曜日

STEMI患者の死亡率低下とプライマリPCI実施の増大


STEMI患者の死亡率低下、背景にプライマリPCI実施の増大
■フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らは、フランスにおける1995~2010年のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の死亡について調査した結果、STEMI患者の全心血管死は減少しており、その要因として、60歳未満の女性STEMI患者の増加、その他人口動態的特徴の変化および再灌流療法および推奨薬物療法の増加が挙げられたと報告した。

■本調査は、近年のSTEMI患者の死亡低下と、その主な改善要因として再灌流療法の実施が報告されていることを受けて行われた。JAMA誌2012年9月12日号掲載報告より。

<原文抄録>

以下は、この論文に関する天理よろづ相談所病院 循環器内科部長
中川 義久先生のコメントです。
STEMIにプライマリPCIが有効、秋の夜長に想うこと
http://www.carenet.com/news/clear/journal/33736

2013年7月24日水曜日

卵円孔開存と無症候性脳血管疾患および虚血性脳卒中

集団ベースのコホートにおける卵円孔開存、無症候性脳血管疾患および虚血性脳卒中

Patent Foramen Ovale, Subclinical Cerebrovascular Disease, and Ischemic Stroke in a Population-Based Cohort


背景PFOは、脳卒中患者において、脳卒中ではない対照者よりも頻繁に認められる。しかし、一般集団におけるPFO関連の脳卒中リスクは十分には確立されておらず、PFOと無症候性脳梗塞(SBI)との関係は不明

方法地域集団からサンプリングした脳卒中の既往がない39歳以上の1,100人を対象に、生理食塩水の注入による造影を行う経胸壁心エコー検査によってPFOの有無を評価し、平均11年間の追跡調査を行った。さらに、参加者のうち360人は、SBIの検出のために脳磁気共鳴画像検査(MRI)を受けた。すでに確立されている脳卒中の危険因子で補正後に、PFOと関連する脳卒中のリスクを評価し、PFOの有無によってSBIが生じるオッズを検討した。

結果参加者のうち164人(14.9%)がPFOを有していた。平均11.0±4.5年の追跡期間中に、虚血性脳卒中が111件(10.1%)発生し、PFO+群では15件(9.2%)、PFO-群では96件(10.3%)であった。12.5年間の脳卒中の累積リスクは、PFO+群では10.1%(標準誤差:2.5%)、PFO-群では10.4%(標準誤差:1.1%)であった(p=0.46)。PFOと脳卒中についての補正ハザード比は、1.10(95%信頼区間[CI]:0.64~1.91)であった。MRIを実施したサブコホートにおいて、PFOはSBIとは関連していなかった(補正オッズ比:1.15、95%CI:0.50~2.62)。

結論この地域集団から成るコホートにおいて、PFOは、臨床的脳卒中または無症候性脳血管疾患のリスク増加とは関連していなかった。J Am Coll Cardiol. 2013;62(1):35-41

原文抄録
http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=1686317
出典
https://ds-pharma.jp/literature/jacc/article/2013/07_2_01.html


<参考>
ASDと卵円孔開存の相違

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1041906000
http://www.moon.sannet.ne.jp/naruto2/asd2.html
■卵円孔開存の頻度は約25%大きさは1~19mm(平均4.9mm)。
最近では、心房中間隔欠損と判断しても、10mm以下は1歳までに自然閉鎖することが多いことがわかってきた。
■1歳以上で、10mm以上の孔は自然閉鎖しないと言われてる。
■卵円孔開存は左房側からの卵円孔弁によっておおわれた状態なので左房の圧が右房より高いにもかかわらず、通常は左→右シャントは生じないないようになっている。
しかし、負荷(いきむなど)をかけたり肺梗塞を発症したりすると右→左シャントが起きる。


<私的コメント>
心エコーによる
卵円孔開存の診断率、ASDとの鑑別はどうなのでしょうか。





2013年6月19日水曜日

COLM試験

高齢高血圧患者に対するARB+CCB 対 ARB+利尿薬、有効性は同等

心血管イベントのリスクが高い高齢高血圧患者に対する降圧薬併用療法として、ARBに他剤を併用する場合、CCBと少量の利尿薬ではどちらがよいかを比較検討するランダム化比較試験、COLM試験の結果が明らかになった。
主要評価項目である複合心血管イベントのリスクは、両群で同等だった。
イタリア・ミラノで6月17日まで開催されていた欧州高血圧学会(ESH2013)で、森ノ宮医療大学学長の荻原俊男氏が発表した。
■75歳で層別して各イベントのリスクを見たところ、致死的および非致死的脳卒中においては、75歳以上でCCB併用群のリスクが低い傾向にあり、年齢との間に有意な交互作用を認めた。
■また、重篤な有害事象の発生はCCB併用群が8.2%、利尿薬併用群が9.8%、薬剤に関連した重篤な副作用による脱落率は0.2%対0.6%と、両群ともCCB併用群で有意に少なかった。

■主要評価項目である心血管イベントのリスクは、両群で同等に減少した。

また層別解析から、75歳以上における脳卒中についてはCCB併用の方がリスク減少の点で有利とも考えられた。
副次評価項目の1つである安全性と認容性の評価からは、心血管イベントのリスクが高い高齢高血圧患者に対し てはCCB併用の方が好ましい可能性がある。

出典  NM online 2013.6.18
版権 日経BP社


http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/esh2013/201306/531152.html?ref=RL2

2013年6月11日火曜日

ラクナ梗塞予防のための血圧目標値は<130mmHg

ラクナ梗塞患者の二次予防目的とした血圧目標値は<130mmHgが有益:SPS3/Lancet 
http://www.carenet.com/news/journal/carenet/35133
カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のOscar R Benavente氏らがSecondary Prevention of Small Subcortical Strokes(SPS3)試験の結果を発表した。
内容は、 「ラクナ梗塞を最近(180日以内)発症した患者に対し、収縮期血圧目標値130mmHg未満とする血圧コントロールは有益であり支持される」という内容。

<参考サイト>
「脳卒中再発予防のためには収縮期血圧130mmHg未満」を支持する結果(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(105)より-
http://www.carenet.com/news/clear/journal/35165
■「脳卒中再発抑制のためには収縮期血圧130mmHg未満のより厳格な降圧が望ましい」




        http://watercolor.hix05.com/artist/Dufy/dufy.html

2013年6月3日月曜日

頸動脈エコー

■頸動脈エコーが捉える動脈壁・・・高エコー層・低エコー層・高エコー層の3層構造として観察される。

■この3層構造の内腔側2層分の厚みが,病理学的な内膜組織と中膜組織を合わせた厚みと一致することを報告。(Pignoli, et al   Circulation 1986; 74: 1399)

■IMTが0.1mm増加するごとに心血管イベントの発生リスクは1.12~1.17倍に高まる。
         (Lorenz et al  Circulation 2007; 115: 459)

■IMTは経年的な増加が少ないほど予後が良好である。

■IMTの経年変化量はせいぜい数10μm程度であり,一般臨床の場で正確に測定し,追跡できるレベルの変化ではない。

■一般臨床での有用性・・・「既知の危険因子だけでは絞り込めないリスクの程度を絞り込み,テーラーメードの治療法を決定するとき」

■質的な異常,すなわちプラークの脆弱性にも注意することが重要。

■脆弱で不安定なlipid richなプラークや内部に出血巣を有するプラークは,エコーではいずれも低輝度のプラークとして描出される。こうした「黒いプラーク」が見出された場合は,必要なら脳外科に紹介して脳梗塞の検査を勧める。


参考
MTPro 2010.3.25
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2010/M43121071/

2013年5月27日月曜日

心外膜脂肪と心血管危険因子

一般集団における心外膜脂肪と心血管危険因子および新規発症心筋梗塞との関連

Heinz Nixdorf Recall研究
https://ds-pharma.jp/literature/jacc/article/2013/04_2_01.html


Epicardial fat is independently associated with fatal or nonfatal coronary events in the general population independent of traditional cardiovascular risk factors and the CAC score. Our results suggest that EAT complements information derived from the CAC score and therefore may increase the value of noncontrast cardiac CT examinations.
一般集団において心外膜脂肪は、従来のリスク因子とは独立して致死的および非致死的冠動脈イベントと関連しており、CACスコアに加えて心臓CTから得られる情報を補完するものである。

(原文・抄録)
http://content.onlinejacc.org/article.aspx?articleid=1654988

2013年5月21日火曜日


 米国で減塩論争勃発,推奨量5.8g/日未満に根拠なし?
IOMの主張にAHAが即日反論

■米国人の1日の食塩摂取量は平均8.6gだが,現行のガイドラインでは14~50歳について5.8g未満とし,51歳以上と全ての黒人,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病がある場合は3.8g未満を推奨しているが,厳し過ぎる減塩については,血中脂質やインスリン抵抗性に悪影響をもたらし,その結果,心臓病や脳卒中のリスクを高めるのではないかと懸念する声がある。
■AHAによると,心筋梗塞と脳卒中の35%,心不全の49%,死亡の24%は高血圧による。
AHAが行った最近の研究のレビュ―は,高血圧がない患者で,1日の食塩摂取を3.8g未満に抑えることにより,加齢とともに起こる血圧の上昇が顕著に抑制され
■日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2009』では,減塩目標として6g/日を提唱しつつも,「より少ない食塩摂取量が理想」とし,3.8g/日まで安全性のエビデンスがあるとしている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1305/1305044.html
出典  MT Pro 2013.5.20
版権  メディカルトリビューン社

<私的コメント>

 いずれにしろ過度の食塩摂取は良くないという点でコンセンサスは得られています。
 問題は厳格な減塩がメリットをもたらすかどうかということです。


2013年5月15日水曜日

n-3脂肪酸、心血管死減らさず

■心血管リスクまたは動脈硬化を有するが心筋梗塞の既往はない患者コホート(約1万人)を対象に、 n-3脂肪酸の効果を無作為化プラセボ対照試験で検討。

■追跡期間中央値5年で、心血管疾患による死亡または入院の発生率はn-3脂肪酸群11.7%、プラセボ(オリーブオイル)群11.9%だった(調整後ハザード比0.97、P=0.58)。

原文
The Risk and Prevention Study Collaborative Group.n–3 Fatty Acids in Patients with Multiple Cardiovascular Risk Factors.N Engl J Med 2013; 368:1800-1808. 

<私的コメント> 
以前、諸外国でのEPA投与量は日本より少ない(半分量)と聞いたことがあります。
原文の抄録でも1g/日となっており確かに服薬量の問題がありそうです。


 

2013年4月16日火曜日


カナダ糖尿病GL「HbA1cで診断,40歳からスタチン,55歳からRA系阻害薬」

カナダ糖尿病学会(CDA)は2013年4月8日,診療ガイドラインの改訂を発表。
「診断時のHbA1c値測定」と「HbA1c 6.0~6.4%(NGPS値)を前糖尿病(prediabetes)と定義」が新たに加わった。また,画一的な目標血糖値は設定されず,年齢や罹病期間,心血管リスクなど個別の状態に応じて設定することが推奨された。
また,心血管疾患予防を目的とした血管保護療法に関する項目を追加。
40歳以上の成人患者へのスタチン使用や55歳以上からのACE阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の使用などが推奨されている。

降圧目標はADAと異なり,130/80mmHgに据え置き
■CDAが今回の改訂のポイントとして最初に挙げたのは糖尿病のスクリーニングとして空腹時血糖(FPG)同様,検査前の絶食が不要なHbA1cを追加したこと。
単回測定のHbA1cが6.5%以上の場合「糖尿病」,6.0~6.4%の場合「前糖尿病(prediabetes)」と診断することを推奨している。
 
■また,血糖管理の目標値については,個別の状況を踏まえた設定を推奨。
ほとんどの1型,2型糖尿病患者においては大血管障害リスク減少を鑑みHbA1c 7.0%以下とすべきとの内容が示されている他,「(診断から間もない若年患者のような)発症早期からの適応が行える場合,7.0%以下」との目標を設定。
さらに「腎症や網膜症リスクを減少させる必要がある場合,一部の2型糖尿病患者ではHbA1c 6.5%以下を目標とすることが可能」との勧告も追加された。
 
■さらに,エビデンスレベルが最も低い「グレードDのコンセンサス」として,期待余命が限定的,要介護度が高い,多発合併症などがある場合は,目標値をより緩やか(HbA1c 7.1~8.5%を目安)にすることが推奨されている。
なお,降圧目標は米国糖尿病学会(ADA)の勧告(140/80mmHg)と異なり,従来の130/80mmHgを推奨している。

「糖尿病患者の心血管年齢は約15年上積み」で積極的な血管保護療法を推奨
■「糖尿病患者の心血管年齢は一般的に実年齢の10~15年上積みされている。個人の短期~長期にわたる心血管疾患リスクを下げるため,血管保護を目指した薬物療法が必要」との見解が示されている。

以下の要因を有する成人1型,2型糖尿病患者では,心血管疾患リスクを減らすためにスタチンの使用を推奨する
・臨床的に明らかな大血管疾患がある
40歳以上
40歳未満で次のいずれか1つがある場合
  ・糖尿病罹病期間15年を超え,かつ年齢が30歳を超える
  ・細小血管合併症がある
次のうちいずれかを有する成人1型,2型糖尿病患者では,心血管疾患リスクを減少させるため,血管保護作用が期待で
 きる用量のACE阻害薬あるいはARBの使用を推奨する
  ・臨床的に明らかな大血管疾患
  ・55歳以上
  ・55歳未満で細小血管合併症がある
注意:妊娠の可能性のある女性に対するACE阻害薬,ARBまたはスタチンは確実な避妊が確認できる場合にのみ使用す
 べき
糖尿病患者の心血管疾患初発予防を目的に,アスピリンをルーチンに使用すべきでない
確立した心血管疾患合併糖尿病患者の再発予防として低用量アスピリン(81~325mg)を使用することは可能
アスピリン不耐容の患者に対し,クロピドグレル75mgを使用することは可能
 
なお,今回のガイドラインの患者教育を目的としたスローガンはABCDES。

A「A1cを適正範囲に」
B「Blood pressureの適正管理」
C「Cholesterolを目標範囲に」
D「Drugs:投与が適切と認められる患者に対する心保護のための薬物療法」
E「Exerciseとその他の生活習慣是正」
S「Stop Smoking」


出典  MT Pro 2013.4.12
版権  メディカルトリビューン社

<私的コメント>
・「アスピリンをルーチンに使用すべきでない」・・・禁忌さえなければルーチンに近い使用は許されるのではないか。
・スタチンやACE阻害薬やARBがコレステロール値や血圧値に関係なく推奨されることは画期的なことと思われる。



ワルファリン服用中はクコにも要注意


納豆だけでない,ワルファリン服用中はクコにも要注意
ドイツで出血リスクに注意を呼びかけ
ドイツ医薬品局は「ビタミンK拮抗薬とクコとの相互作用によりプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が上昇し,重度の出血を来す恐れがある」と注意を促した。

欧州でクコ茶やクコ入りジャムが人気
■クコ(枸杞)はナス科の植物で,特に中国では古くから食卓に上るだけでなく,免疫強化作用,強心作用,血中脂質低下作用があるとされ,不老長寿の妙薬としても重宝されてきた薬用植物。
わが国でも広く知られており,杏仁豆腐の上に載っている赤い実。
 
今回の報告ではビタミンK拮抗薬服用下でのクコ摂取と,INR上昇,出血との関連。

ビタミンK拮抗薬使用患者への情報の周知を
クコの成分によるシトクロームP450(CYP)2C9の阻害,P糖蛋白質との相互作用,クコの成分自体の抗凝固作用などが想定されてはいるが,機序は明らかになっておらず,早急な解明が待たれるところである。

<私的コメント> 納豆、クロレラ食品や青汁と異なりクコはビタミンK拮抗薬の作用を増強することが大きな問題です。



出典  MT Pro 2013.4.9
版権  メディカルトリビューン社




2013年4月13日土曜日

頸動脈プラーク内出血リスクとしての脈圧


どの血圧指標が頸動脈プラーク内出血リスクとなるか:ロッテルダム研究

オランダ・エラスムス医療センターのMariana Selwaness氏らは、前向き住民ベースコホート研究であるロッテルダム研究のデータを解析し、脈圧が頸動脈におけるプラーク内出血(IPH)の存在を示す最も強い血圧指標であることを明らかにした。
IPHは脳梗塞と関連するアテローム性動脈硬化の特徴であるが、これまでその決定因子は判明していなかった。
本研究の結果を踏まえてSelwaness氏は、「拍動流とIPHとの関連は、不安定プラーク(vulnerable plaque)の発現に関する新しい知見をもたらす可能性がある」とまとめている。
最も強い関連を示したのは脈圧
■対象は、超音波頸動脈内膜中膜厚(IMT)が2.5mm以上で、1.5T-MRI検査を受けていた45歳以上の健常者であった。

■IPHの存在は3D-T1w-GRE MRI画像で特定し、血圧指標とIPHとの関連について、年齢、性別、頸動脈壁厚、心血管リスク因子で調整した一般化推定方程式(generalized estimation equation)解析にて評価した。

結果
●年齢・性別による補正後解析の結果、IPHとの関連が有意であったのは、収縮期血圧と脈圧であった(それぞれp=0.04、p=0.002)。

●多変量解析後、最も強い関連を示したのは脈圧であった。

●収縮期血圧の同オッズ比は1.13(同:0.99~1.28、p=0.07)であり、その他の血圧指標で補正後も有意な関連を維持したのは脈圧のみであった。

●喫煙、収縮期高血圧の因子を統合すると、IPHの存在リスクは2.5倍(95%CI:1.2~5.2)上昇した。


<私的コメント>
患者さんから「血圧の上と下の数字が開くとよくない、と他人から聞いたのですが本当でしょうか」と尋ねられることがあります。
そんな時には「上下の血圧が開くのは(一部の疾患を除いて)動脈硬化がすでに起こっているからですよ。年齢とともにこの傾向が強くなるんですよ」と説明します。
この論文では年齢補正がしてあります。
しかし、動脈硬化が強いから結果として脈圧が大きくなり、動脈硬化があるからIPHが起こっているということかも知れません。
つまり、「脈圧による血圧の拍動成分や、さらに付随する血流の拍動による「ずり応力」が、既に存在する頸動脈プラークにメカニカルストレスをかけて、プラークを不安化させ、その内部に出血を生じさせた」とは言えないかも知れません。






2013年3月29日金曜日

降圧剤 論文撤回騒動 


降圧剤「バルサルタン」の臨床試験論文3本が、掲載した学会誌から「重大な問題がある」との理由で撤回された。
血圧を下げる本来の効能は否定されていないが、脳卒中などのリスクを下げる働きもあるとした論文の信頼性は揺らいでいる。
論文をPRに利用してきた製薬会社「N」(東京)の社員が、試験に関係する別の論文で統計解析責任者として名を連ねていたことや、N社が論文責任者側に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが取材で判明した。

問題の臨床試験は、KF医大のM・元教授(56)=2月末に辞職=のチームが04年にスタートさせた。
高血圧の患者約1500人にバルサルタンを飲んでもらい、経過を追跡。
薬の効果を確かめていった。
 
問題の3論文は、09〜12年、日欧の2学会誌に相次いで発表された。
09年の最初の論文は「従来の降圧剤に加えバルサルタンを服用すると、血圧の低下と関係なく、脳卒中や狭心症のリスクも下がった」と、欧州心臓病学会誌に発表された。
 
■N社は、この論文を基に、バルサルタンの効果をアピールする広告を医学雑誌にたびたび掲載するなど営業活動を展開。
コンサルタント会社によると、11年度の売上高は、日本の医家向けの医薬品中3番目の約1192億円に上った。
 
■欧州心臓病学会は、今年2月になって「複数のデータに重大な問題がある」と、論文を撤回。
関連する論文2本を掲載していた日本循環器学会誌も、昨年末に「データ解析に多数の誤りがある」との理由で撤回する事態となった。
いずれの学会誌も「重大な問題」の詳細は明らかにしていない。
 
M元教授は「データ集計の間違いでしかない。論文の結論に影響を及ぼさない」と声明を出し、KF医大は今年1月、学内3教授による予備調査で「研究に不正はなかった」と日本循環器学会に報告した。 この試験を巡っては1年ほど前から、「試験終了時の血圧値の平均値と(データのばらつきを表す)標準偏差のデータが、薬を飲んだ患者群とそうでない群で一致している。試験終了時に異なるのが自然なはず」「同じ薬を使った国内外の臨床試験の結果と合わない」などと、専門家から不自然さを指摘されてきた。

◇研究責任者と密接な関係 個人的謝金も
KF大学に記録が残る08年1月以降、松原元教授の研究室に提供された民間からの奨学寄付金は、253件計4億2800万円。

このうち、N社からは18件計1億440万円あり、金額は約4分の1を占めていた。
 
2月のN社の社長定例会見では、論文が撤回されて営業活動に臨床試験のデータが使えなくなったことには「非常に残念。今後、(顧客の)医師にも説明していきたい」と話していた。


出典  毎日新聞  2013..29
版権  毎日新聞社

2013年3月19日火曜日

ワルファリン+アスピリン併用の心房細動患者


ワルファリン+アスピリン併用の心房細動患者、脳梗塞は減少せず大出血が増加

房細動患者の大規模国内レジストリーであるJ-RHYTHMの登録者を対象とした新たな研究で、心房細動患者に対する抗血栓治療においてワルファリンとアスピリンを併用した症例では、脳梗塞は減少せず、大出血のリスクが増加していることが明らかになった。
藤田保健衛生大学循環器内科のグループが、3月17日まで横浜で開催されていた第77回日本循環器学会(JCS2013)で発表した。

■演者らは、J-RHYTHMに登録された7101例のうち、ワルファリン単剤投与群(5388例)、アスピリン単剤投与群(475例)、ワルファリン+アスピリン併用群(1101例)を比較した。
平均観察期間は2年間だった。

■結論; 心房細動患者に対するワルファリンとアスピリンの併用群は、ワルファリン単独療法群に比べ、脳梗塞イベントが減らず、大出血と全死亡のリスクが増加していた。
大出血リスク増加に対しては、出血の既往が特に関連が強かった。


<私的コメント>
私はしばしば、こういった症例に併用療法を行っていました。


脳梗塞の既往は、ワルファリン群が13%、アスピリン群が7%、併用群が27%。冠動脈疾患の有病率はそれぞれ4%、10%、29%。CHADS2スコアはワルファリン群が1.6±1.2、アスピリン群が1.3±1.2、併用群が2.2±1.3だった。

J-RHYTHMに登録された7101例のうち、ワルファリン単剤投与群(5388例)、アスピリン単剤投与群(475例)、ワルファリン+アスピリン併用群(1101例)

脳梗塞の既往は、ワルファリン群が13%、アスピリン群が7%、併用群が27%。冠動脈疾患の有病率はそれぞれ4%、10%、29%。CHADS2スコアはワルファリン群が1.6±1.2、アスピリン群が1.3±1.2、併用群が2.2±1.3だった。


脳梗塞、大出血、全死亡の各イベント別に、ワルファリン群に対するアスピリン群、併用群のハザード比上昇に関連した有意な予測因子について検討した。

アスピリン群における脳梗塞のハザード比上昇の有意な予測因子は男性と低体重、全死亡のハザード比上昇の有意な予測因子は男性、低体重、貧血、永続性心房細動だった。同様に、併用群における大出血については出血の既往、全死亡については、男性、貧血、永続性心房細動の既往が有意な予測因子だった。

CHADS2スコアの上昇は、ワルファリン群に対するアスピリン群、併用群の、すべてのイベントリスク増加の有意な予測因子となっていた。



2013年2月23日土曜日

バルサルタン 降圧剤論文撤回

 
バルサルタン 降圧剤論文撤回 学会が再調査要請
京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受け撤回された問題で、日本循環器学会が同大学長に対し再調査を求めていた。

■大学側は、捏造などの不正を否定する調査結果を学会に出していたが、学会は納得せず不信感を抱いている。

 
■問題になっているのはM教授(55)が責任著者を務め、09〜12年に日欧の2学会誌に掲載された3論文。
患者約3000人で血圧を下げる効果などが確かめられたとする内容だ。
昨年末、3本中2本を掲載した日本循環器学会が「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決めるとともに、学長に事実関係を調査するよう依頼した。
 
しかし大学は調査委員会を作らず、学内の3教授に調査を指示。
「心拍数など計12件にデータの間違いがあったが、論文の結論に影響を及ぼさない」との見解を学会に報告した。

■学会はこれに対し、永井良三代表理事と下川宏明・編集委員長の連名で書面を学長に郵送した。
(1)調査委員会を設け、詳細で公正な調査をする
(2)結論が出るまで、M教授の声明文をホームページから削除する
——ことを要請している。
 
■毎日新聞の取材に、学会側は「あまりにもデータ解析のミスが多く、医学論文として成立していないうえ、調査期間も短い。大学の社会的責任が問われる」と説明。
大学は「対応を今後検討したい」とコメントを出した。
 
出典 毎日新聞 20113.2.21(一部編集)
版権 毎日新聞社

<私的コメント>
私は数十年日本循環器学会に所属しています。
しかし、今回のとうの事例は初めてす。
どちらに正義があるのか。
当事者が正しいのであれば反論すべきです。
そうでなければ大学の名を汚すことになってしまいます。
学長自体も、ちょっとアンチエイジングではそれなりの方ですよね。



2013年2月13日水曜日

頸動脈プラーク内出血リスクの血圧指標


どの血圧指標が頸動脈プラーク内出血リスクとなるか:ロッテルダム研究
オランダ・エラスムス医療センターのMariana Selwaness氏らは、前向き住民ベースコホート研究であるロッテルダム研究のデータを解析し、脈圧が頸動脈におけるプラーク内出血(IPH)の存在を示す最も強い血圧指標であることを明らかにしたIPHは脳梗塞と関連するアテローム性動脈硬化の特徴であるが、これまでその決定因子は判明していなかった。
報告者らは「拍動流とIPHとの関連は、不安定プラーク(vulnerable plaque)の発現に関する新しい知見をもたらす可能性がある」としている。
■本研究は、MRIで評価した頸動脈プラーク内出血の最も強い血圧関連規定因子が、脈圧であることを示した高血圧性血管障害の病態生理を考える上で重要な論文である。
■本研究で、プラーク内の出血は頸動脈プラークの25%程度と高頻度に見られている。
これまでの研究では、頸動脈プラーク内の出血の存在は、不安定なハイリスクプラークを意味し、より脳血管疾患のリスクが高いことが報告されている。

■本研究では、血行動態の拍動性血圧成分である脈圧が、収縮期血圧や拡張期血圧、平均血圧などの絶対値よりも強いプラーク内出血の規定因子となった。

■つまり、本成績を説明する機序としては、脈圧による血圧の拍動成分や、さらに付随する血流の拍動による「ずり応力」が、既に存在する頸動脈プラークにメカニカルストレスをかけて、プラークを不安化させ、その内部に出血を生じさせたと考えられる。
([監修] 自治医科大学 循環器内科 教授 苅尾七臣)


<私的コメント>
脈圧に関しては論文の内容から年齢補正がしてある。
しかし、脈圧の増加が動脈硬化、特にstiffnessと関連していると考えるなら、この結果は当然ともいえる。
すなわち原因なのか結果なのかも分からないことになる。

2013年2月8日金曜日

ISAR-LEFT MAIN 2試験


非保護左主冠動脈主幹部病変を有する患者の転帰はZESとEESで同等
非保護左主冠動脈主幹部(ULMCA)病変を有する患者において、第2世代の薬剤溶出性ステント(DES)であるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)とエベロリムス溶出性ステント(EES)を比較したISAR-LEFT MAIN 2試験が、ドイツとイタリアの3施設で行われ、「転帰は同等」との結果が示された。
ドイツ心臓センターのJulinda Mehilli氏が、2012年10月、米フロリダ州マイアミで開催されたTranscatheter Cardiovascular Therapeutics(TCT2012)で報告した。


2013年2月7日木曜日

ACE阻害薬の代表的な臨床研究


ACE阻害薬の代表的な臨床研究

1.総死亡率の低下
COSENSU (1987)
SOLVD-TREATMENT (1991)
V-HeFT Ⅱ (1991)
SAVE (1992)
Hy-C (1992)
AIRE (1993)
SMILE (1995)
TRACE (1995)
ISIS-4 (1995)
HOPE (2000)
X-SOLVD ( 2003)
ADVANCE (2007)
HYVET (2008)

2.疾患治療に大きな影響
HYCAR (1995)
TREND (1996)
AIPRI (1999)
ATLAS (1999)
REIN (1999)
PROGRESS (2001)
AASK (2002)
ANBP2 (2003)
EUROPA (2003)
BENEDICT (2004)
ASCOT-BPLA (2005)
ACCOMPLISH (2008)

    (国際医療福祉大学三田病院 内科 佐藤敦久部長)
出典 Medical ASAHI 2013 February